長く続く介護業界における人手不足の問題を解消する手段として、外国人介護士の受け入れが推進されている。日本人の介護職の確保が進んでいない中、まさに「最後の切り札」というような選択肢として注目を集めている。
直接のきっかけとなったのが、2019年4月に制定された「特定技能制度」だ。これは介護業界に限らず日本社会全体で深刻化している人手不足の解消のために設けられた外国人在留資格のこと。深刻な人手不足と指定された業種に外国人を受け入れるべく、在留資格を与えるという制度だ。
厚生労働省の2020年のデータによると、日本には約170万人の外国人労働者が従事しているという数字がある。そのうち介護従事者を含めた医療・福祉の労働者数は約4万人ほど。現在の介護業界の人手不足の状況を考えると、この数字は決して多いとは言えず、まだこれから積極的な採用を進めていく必要があるといえるだろう。
ただ、現状では問題点も多い。その一つに、外国人介護士の受け入れ対象国が、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3カ国に限定されているという部分がある。希望者は日本の文化や日本語を学ぶ必要がある上、所定の試験に合格しなければならず、かなり高いハードルが高くなってしまっている現状がある。
さらに、受け入れる施設にもさまざまな課題が出てくる。介護スキルを学んだとはいえ、外国人である以上、日本語の言葉遣いや接遇の礼儀作法、高齢者との接し方などを現場でしっかりと教えていく必要が出てくる。そのため、外国人介護士を手厚くサポートできる環境がなければ難しいと言える。しかし実際は、多くの施設が人手不足の渦中にあり、外国人をレクチャーする余裕などないのが実情としてある。こうした背景を考えると、まだ外国人の受け入れ体制は万全とは言えない。
こうした人手不足の問題を解決していくには、多くの人が現状を知り、声を上げる必要がある。介護の未来に関心がある人、現役介護士として活躍している人は、ぜひ外国人介護士の現状を詳しく把握してほしい。