介護業界が抱える問題・課題の全体像

身も蓋もない言い方になってしまうが、現在の介護業界は問題・課題だらけといっても過言ではない。そんな介護業界が抱え込んでいる課題の土台ともいえるのが人手不足の現状と連鎖だ。

厚生労働省による2021年のデータでは、介護職の有効求人倍率は3.63倍ほど、同じデータで全職業の平均が1.03倍。これを比較しただけでもいかに人手が不足しており、介護業界全体で人材を求めている、または争奪戦を繰り広げている現状が窺えるだろう。

この人手不足の状況が、連鎖反応のようにさまざまな問題・課題を生み出している。そもそもどうして人手不足になっているのか。理由は主に、激務と収入環境だ。簡単に言えば、厳しい労働環境に対して得られる収入が少なく、昇給・昇進の余地も少ないのだ。その結果若い頃は意欲とやりがいとともに介護職で働いていた人が、30代を過ぎる頃から将来を考えて他の職業に転職してしまうというケースがよく見られる。

とはいえ、収入の問題は、介護報酬の仕組みが関わってくるため、解決は簡単ではないのだ。民間の介護施設であれば、利用料を値上げして介護を受ける人達の負担を増やして介護士の収入を増やすこともできるが、介護業界全体の収入を増やそうと思えば、介護報酬の制度そのものを改正し、介護保険料をはじめとしたわれわれ一人ひとりの負担を増やす必要も出てくる。

高齢化の進行で需要は増えているのに担い手が増えず、人手不足で激務の環境になってしまい、それが離職率を高めてしまう。そんな人手不足がもたらすさまざまな課題点をどう改善していくが今後の介護の大きなテーマとなっている。